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甘いも、せつないも、すべての想いはあなたと共に・・・
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【アレキサンドライト番外編】君への願い #03



side アキ




そうこうしているうちに、菊乃さんの降車駅に着いて、タクシー乗り場へと向かった。

「じゃあ俺はここで」

「井上様。よろしければ寄っていらっしゃいませんか? ここでお返ししては、お館様に叱られます。――――いえ、羨ましがられて拗ねられます」

「すね……じぃちゃんが?」

「はい。大変面倒です」

キリッと真面目な顔をして言ったあと、ニコリと小首を傾げながら微笑んだ。

その表情は反則だなぁって思いつつ、特に断る理由もないし。じぃちゃんの顔も見たいかなって思ったから、誘われるままタクシーに乗り込んだ。



「……あれ?」

車窓を流れる景色を見て、思わず声に出た。

駅からじぃちゃんちへの道って知らないけど、なんだか方向が違うような気がする。

菊乃さんをチラリと見ると、無言でコクリと頷いた。

やっぱり。

このタクシーはじぃちゃんちとは違う方向に向かっているみたいだ。

「やっぱり、やーめた」

菊乃さんがいきなり喋りだした。その口調はいつもの菊乃さんとは違っていて。驚いて菊乃さんの顔を見る。

「せっかく今日は御館様が外泊されているので若い男でもナンパして家に連れ込もうとしたのだけど。あなた、やっぱり私の好みじゃないわ」

そう言ってツンッと顎でしゃくるように俺を見た。

菊乃さん、なんだってこんな芝居を――――って、もしかして……。

「運転手さん。その辺で止めて、この男を降ろしてもらえます?」

「なっ」

俺が反論しようとするのを、菊乃さんが目で諌めた。

「私の好みは――――運転手さんみたいな大人の男がいいわ。よかったら、今晩いかが?」

運転手がバックミラー越しにちらりと菊乃さんと俺を見た。そして無言で路肩に寄せ停車する。

こいつの狙いは菊乃さんなのか? 俺がいると面倒だから、菊乃さんの誘いに乗ったフリをして俺をおろそうって腹か?

「ご苦労さま」

そう言って菊乃さんが透明なアクリル板の隙間に細い手を滑らせ、運転手の首筋を撫でた。

うっと小さなうめき声の後、運転手の頭がカクっと前に倒れる。

「菊乃さん?」

「ふふ」

菊乃さんは右手の手のひらを俺に向け、微笑んだ。

右手の薬指にある指輪。くるりと手のひら側に回された石の部分が開いていて、そこから短い針が出ている。

運転手の首筋にもなにかで刺された痕があり、この仕込み指輪だなって思った。

「ちょっと電話を一本かけてもよろしいですか?」

「ど、どうぞ」

まるでスパイ映画みたいなワンシーンを目の当たりにして、俺は促されるままタクシーから降りた。菊乃さんがタクシーから降りる際は手を貸した。

「ありがとうございます。――――あ、井上様」

たたんである日傘を俺に差し出し、菊乃さんがにっこりと微笑んだ。

「薬の量が少なめですので、体質によってはすぐに目を覚ますかもしれません。その時はこれでポコッとやってしまってください」

「ポコッと?!」

「ええ。ポコッと」

そう言って笑いながら俺から少し離れ、電話をかけ始めた。







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