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甘いも、せつないも、すべての想いはあなたと共に・・・
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【アレキサンドライト番外編】君への願い #05



side アキ




「あの……さ。菊乃さん。いつも、そういうの身につけてんの?」

なんて訊いたら良いのかわからなかった。だから俺は1つずつ訊いていこうと思った。

「――――え? ああ、これですか?」

俺の視線を追って、菊乃さんが右手を上げる。もう針は見えなくて、きっちりとおさまった石はちゃんと上を向いていた。

「井上様はなにもお持ちではないのですか?」

「えっ?!」

「まあ……本当にお持ちでないのです? 如月様はなにか持つようにおっしゃらないのですか? 不用心ですこと……」

「不用心?」

どういう意味だろう。続きを訊こうと思ったのに、黒塗りの車が目の前で止まって、いかにもな黒づくめにサングラスの男が2人ほど降りてきた。

とっさに俺は菊乃さんをかばうような位置に立ち、日傘を竹刀のように持って身構える。

「井上様、大丈夫です。守ってくださってありがとうございます」

菊乃さんが俺の構えた手に手を重ね、にこりと笑った。

「遅かったですね」

「申し訳ございません。お怪我はございませんか?」

男たちが菊乃さんに向かって深々と頭を下げる。

不思議そうな顔をしている俺に対しても軽く頭を下げた。

「あの男は我々が引き取ります。お二人はお送りしますので、どうそこちらの車にお移りください」

そう言ってタクシーの後ろに止められた車に俺たちを誘導しようとした。

その時だった。

いきなりバックしたタクシーがガコンッと大きな音をたてて黒塗りの車にぶつかり、弾かれるようにして車道に出るとそのまま走り去った。

黒づくめのもう一人が後を追おうと慌てて車に乗りこもうとするのを、菊乃さんが鋭い声で止める。

「おやめなさい! 引火したらどうするのです?!」

車のドアに手を伸ばしかけていた男は慌てて手を引っ込めた。

「いつから目を覚ましていたのか……それとももとから効いていなかったのか……いずれにしてもわたくしどもの落ち度です。井上様、申し訳ございません」

「いや……俺は……」

「しかもわたくし……不必要に如月様のお名前を出してしまいました。あの男の耳に入っていなければ良いのですが……」

不安そうに車が走り去った方向を見て言った。

「しかし……ヤナギ」

菊乃さんの低い声にビクッと肩を震わせた黒づくめのうちの1人――――ヤナギと呼ばれた男は、軍人の整列かってほど背筋を伸ばし、かかとをカッと音が鳴るほど勢い良くつけて菊乃さんに向いた。

「あのような場合、停めてある車の進路を塞ぐように停めるのが鉄則です。そんな初歩的なことも忘れてしまったのですか?」

「申し訳ございませんっ」

「さて井上さま」

「はいっ」

俺まで背筋がピンと伸びる。

「参りましょうか」

いつの間にか用意されていた車に手を差し向けて、にこりと笑った。



後部座席に並んで座りながら、菊乃さんの横顔をチラチラと見ると、俺の視線を感じたのか菊乃さんがクスクスと笑った。

「井上様、なにかわたくしにおっしゃりたいことがあるのでは?」

そう言って水を向けてくれた。だから言うってわけじゃないけど――――。

「菊乃さん。あぶないっす」

「――――は?」

「さっきはたまたま運が良かっただけかもしれないし――――あんまり無茶しないでください。菊乃さんにもしものことがあったら、じぃちゃんも、もちろん俺も悲しいっす!」

こぶしを握りながら力説する俺に最初は目を丸くして聞いていた菊乃さんだったけど。

抑えきれないように袖で口元を隠し、横を向いて肩を揺らした。

「菊乃さん?」

泣いているのかと思ったら、笑ってる! めっちゃ笑ってる!

「ちょっと菊乃さんっ。俺、本気マジっすからね?! 心配なんだってば!」

「申し訳……ござ……っ。もうっ。井上様には本当に……かないませんわっ」

まだおかしいのか、時折引きつったように息を詰まらせながら話す菊乃さん。

そんな菊乃さんを見ていたら俺もなんだか楽しくなっちまって。

「いつまでわらってんすかっ」

って、笑いながら訊いた。

「申し訳ございませんっ。てっきりわたくし、"今の男は何者だ"ですとか、"その仕込み針はなんだ"とか、詰問されるのかとばかり。まさかわたくしの身を案じていただけるとは……」

そこまで言うと、また笑いだした。






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2017年07月15日(Sat) 01:02












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