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甘いも、せつないも、すべての想いはあなたと共に・・・
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【アレキサンドライト番外編】君への願い #08



side 如月



くしゅんっ

「風邪ですか?」

くしゃみをすると、車の中で横に座る黒木が心配そうに訊いてきた。

「いや、風邪ではない」

「それでは――――井上様あたりが噂をしているのかもしれませんね。なにか悪口を言われるようなことをされたのですか?」

さっきの心配そうな顔はどこにいった。なぜ悪口限定なのだ? しれっと出るおまえの言葉のほうがよっぽど悪口だ。

「いい男だと、噂しているのだろう」

「はいはい」

黒木がおざなりな返事をすると、ちょうどジャケットの内側にしまったスマホが震えた。このバイブのパターンは、アキからくるメールだ。

スマホを取り出し、内容を確認する。

「噂をすれば、ですか?」

「ああ。今日は椿山城に泊まるらしい」

椿山城。アキが"じぃちゃん"と言って慕うご老体――――山城の屋敷。小高い丘、いや山には椿が植えられていて、季節には色とりどりの花を咲かせる。

その昔、椿はぽたりと花が落ちることから斬首を連想させ、武士には忌み嫌われたらしい。ご老体はこの逸話をむしろ気に入っており、あえて椿を植えさせたと聞いている。

政財界の影のフィクサーと言われた男。ひとにらみすれば会社は潰れ、この男の一挙手一投足に震える経営者も少なくない。畏怖と畏敬の念を込めて、"椿山城"と呼ばれていた。

そんなご老体の後ろ盾で起業した私は、この男の後継者とされている。

私を値踏みする者、取り入ろうとする者、蹴落とそうとする者。まったく枚挙に暇がない。

『急で悪いんだけどさ、じぃちゃんちに泊まってくる』

短くそう書かれたメールを見て、ためいきをひとつついた。

"じぃちゃん"なんて、あの男をそう呼べる人間は他にはいない。

そして、そう呼ばれ目尻を下げるご老体。そんな顔をさせる人間も他にはいない。

昔のご老体を知る人間が今の姿を見たら、さぞかし驚くことだろう。

「椿山城か……しばらく行っていないな」

「この後は社に戻って事務作業の予定でしたが、そう急ぐ内容でもございません。このまま椿山城に向かわれますか?」

「――――そうするか」

黒木が運転手に行き先の変更を告げる。

「なにか手土産を持って行かれますか?」

「いらんだろう。ご老体にはアキがいれば十分だ」

いらないと言っているのに、黒木は運転手と途中に寄る店の話をし始めた。

私は諦めて、シートに身体をあずけ外を見る。

夏の日差しが空気を歪ませ、どこか知らない街のようだった。

そんな外の様子に、なぜだか言い様のない不安のようなものが、胸の中に渦巻いた。






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2017年07月22日(Sat) 15:29












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