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甘いも、せつないも、すべての想いはあなたと共に・・・
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【アレキサンドライト番外編】君への願い #55



side アキ




「いてて……」

腰をさすりながら、用意されたタクシーに乗り込んだ。

後から敦彦が隣に乗り込んでくる。

「○○の山城邸まで」

敦彦が短くそう告げると、運転手がかしこまりましたと言って車を走らせた。

じぃちゃんち、それだけで通じるのスゲーなぁと毎回思う。

俺の前では気さくなじぃちゃんなんだけど、やっぱり有名なんだな。まぁ、俺には関係ないけど。

じぃちゃんはじぃちゃんだし。

って思ってから、あっと思わず声を漏らした。

敦彦が"どうした?"って顔で見てる。

「俺……じぃちゃんに黙って出てきたんだった。じぃちゃん、怒ってるかな」

「……」

「うわっ。そこ、無言になるなよっ」

「ちゃんと謝るんだな」

こくんと頷くと、敦彦が俺の頭をポンポンと2回叩いた。





「じぃちゃん! 心配かけてゴメン!」

じぃちゃんは自分の部屋で書き物をしていた。

部屋中に広がる墨汁の香り。その濃さが部屋に長くいたことを物語る。

じぃちゃんの部屋に入るなり頭を下げた俺に、とくにかけられる言葉はない。

頭をゆっくりと上げると、じぃちゃんが横目でジロリと俺を見つめていた。

うわ、怒ってる? 怒ってるよな。

でも、じぃちゃんの口から出たのは予想していない言葉だった。

「奥座敷できっちり反省したようじゃな。なら、よい。小僧、片付けを手伝え。じきに菊乃が飯時だと呼びに来る」

え?

ぽかんとじぃちゃんを見る俺の脇腹を敦彦がつっついた。

それに弾かれるように、床に散らばる紙を集め始める。

「じぃちゃん、これ……」

俺の手には――――何枚もある紙には同じ文字が書かれていた。

「ふんっ。ただの筆慣らしじゃっ」

俺の手から紙を全部奪って丸めようとしたから、慌ててそれを取り戻した。

「じぃちゃん、これ、もらっていい?」

じぃちゃんはふてくされた顔で「ふんっ。勝手にしろ」と言って部屋から出ていった。

俺の手には、たくさんの紙。そこには『井上 晃』の文字。

俺の無事を祈りながら書いてくれたんだろうか。

「じぃちゃん! ありがとう! 俺、大切にする!」

じぃちゃんの姿はもう見えなかったけど、じぃちゃんが歩いていった方向へ俺は大きな声で礼を言った。

「……そんなにたくさん持って帰ってどうする。ゴミになるだけだろうが」

感動してる俺に、敦彦がぶち壊しな事を言った。

「いいじゃんか」

唇を尖らせて言う俺に、敦彦がうっすらと笑った。

「保存するためのファイルフォルダーでも買って帰るか。それとも額縁にするか?」


敦彦の提案に笑って「それ、いいな!」って答えたところに菊乃さんが俺たちを呼びに来た。


無言で俺を抱きしめると、敦彦の顔を見て「あら。失礼しました」と、ホホホと口に手を当てて笑いながら戻っていった。


「おまえ、スゲー不機嫌な顔、してんぞ」

そう教えてやったら更に不機嫌な顔で俺を見下ろすから。俺は笑いながら敦彦の腹をポスっと叩いて、一緒に部屋を出た。






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