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甘いも、せつないも、すべての想いはあなたと共に・・・
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【いろは匂へと3】わかよたれそ #39



「こほっ」

奥村が咳をした。

それを皮切りに止まらなくなったのか、ひどく咳き込んでいる。

「なぁに? 風邪?!」

つないでいた手を離し、しっしっと手のひらであしらう女将さん。

板さんがコップに水を汲んでくれて、それを受け取った俺は慌てて奥村に駆け寄った。

「近く……来るなっ」

「なんで!」

「うつるだろうが」

咳き込みながらも俺に背中を向けようとする奥村に、回り込んで正面に立った。

「もしかしてさっき俺を部屋から追い出したのは――――」

照れくさそうに顔を背ける奥村を見ていたら……俺はどうしても押さえられなくなった。

たんっと一歩踏み込むと、正面から奥村の両頬に手を添える。

とっさに反応できない奥村の顔を強引に正面を向かせると、俺は――――



重なる、熱。

隙間を縫ってぬるりと滑り込む、熱。


俺の手を引き離そうと手首を握った奥村だったけれど、その力は抜け、かわりに俺の背中に回される。

俺も奥村の頬からそのまま頭の後ろに手を回した。

強く抱きしめ合いながら、唇をむさぼる。

「うつるぞ」

「…………」

「うつって一番困るのはおまえだろうが」

「俺は、健康優良児なんだ。うつらない」

「たいした自信だな」

「うぉっほんっ!」

大きな咳払いに、ハッと我に返る。

奥村と抱き合ったまま、ふたりとも咳払いの方に顔を向けた。

腕組みをしている女将さんと目が合う。心なしか、こめかみに怒りマークが浮かんでいるようにも見えた。

「あんたたち! 予約のお客さんがそろそろいらっしゃるから、余所でやりなさいっ」

そう言ってつかつかと近づくと、奥村の尻を蹴った。

女将さんっ。着物!

意外に筋肉質な脚が見えて、さっきの"元プロレスラー"っていうのもあながち嘘ではないのかもと思い始めた。

文句を言いながら奥村が先に店を出る。そのあとに続こうとしたとき、女将さんが俺に耳打ちした。

「隆一を信じて、正面からぶつかってみなさい」

俺はこくんと頷くと、足早に店を出た。




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