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甘いも、せつないも、すべての想いはあなたと共に・・・
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【いろは匂へと3】わかよたれそ #53



いろいろ試してみたけれど、結局あの香りの再現はできなかった。

そもそも、変わる前の香りも再現できなかったのに、それよりも複雑な香りを再現しようとすることが間違いなんだろうか?

いや。きっとできる。

根拠のない自信だけれども、奥村といれば叶えられる気がした。



もう一つ、家に帰ったらやろうと思っていたことがある。いや、しなければならないことがある。

シャワーを浴びて身支度を整え、俺は外に出た。

そして近所の公園に入ると、そこには優吾さんが立っていた。

俺が、呼び出したのだ。

「優……」

「昔、ブランコから飛ぶの流行りましたよね」

俺の言葉を遮るように優吾さんは話し始めた。そしてそのままブランコに乗り、立ったままこぎ始める。

「僕は怖くて見ているだけだったんですけど、秋成さんは1回転するんじゃないかと思うほどこいで。そして誰よりも遠くまで飛んでいた」

そんなことあったかと首を捻っていると、優吾先生は話を続ける。

「でもある時着地に失敗しちゃって。うちのおじいちゃんに診てもらったの、覚えていませんか?」

俺は黙って首を横に振った。なんだか、言葉を発してはいけない気になっていた。

「おじいちゃんに診てもらっている秋成さんは泣くまいと口を真一文字に結んでいて。で、おじいちゃんに"ぼうず、よく我慢したな"って言われたら、すごくいい笑顔になって」

優吾さんはこぐのをやめ、ブランコに揺られながら遠くを見ていた。

「あれを見て、僕は医者になりたいって思ったんですよ」

「???」

「だって、合法的に秋成さんのカラダを触れるし」

「なっ」

真っ赤になってたじろぐと、優吾さんが「冗談ですよ」って言いながら片足をおろし、ブレーキをかけた。

「秋成さんが痛がっているのに、僕は何もできなかった。だから、あなたを助けるための力が欲しかった」

もう片足も地面におろし、鎖を掴んだまま小さく頷く。自分の中の想いを確かめるように。

このあとの優吾さんの行動は予想がつく。

でも、俺はそれを正面から受け止めなければならないと思っていた。

優吾さんの真摯な想い。それに応えるためには、俺も自分の心に正直に、まっすぐ返すことだと思った。

「秋成さん。僕はあなたのことがずっとずっと好きでした」

ああ。優吾さん。ごめんなさい。過去形で語らせてしまって、本当にごめんなさい。

優吾さんの表情が逆光でよく見えない。

「……ごめんなさい。俺には他に好きな人がいます」

「知っています」

そう言って俺を抱きしめた。

「僕は、秋成さんのことなら何でも知っていますから」

「優吾さん……」

「だから今、秋成さんが困っていることも、そして僕のために心を痛めてくれていることも知っています。――――でも。もう少しだけこのままでいさせてもらえませんか? もう少しだけ……」


そう言って俺を抱く腕に力を込めた。

俺も優吾さんの背中に手を回し抱きしめ返そうかと思ったけれど、それをしてはいけない気がして。ただ抱きしめられていた。




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